リボスイッチ

Last updated on Friday 26th September 2003


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仲田[2002/11/5 18:36:32]
特定の低分子を直接認識して翻訳を制御するmRNAが発見されました。このmRNAは、チアミンピロリン酸(ThiPP)の合成に関わる遺伝子をコードしており、最終産物のThiPPがたまると、これがmRNAに直接結合してタンパク質の翻訳を抑えます。

アロステリックなタンパク質が翻訳を制御しているのではなく、mRNA自身が低分子を識別し、構造変換を起こすという点が新しいわけです。 なお、試験管内進化の研究から特定の低分子に結合するRNA(aptamer)は人工合成されていました。それが実際に生体内で利用されていた(この場合は、ThiPPに結合するaptamer)という点も興味深いところです。 生物はおよそ利用できるものはすべて利用しているということでしょうか。または、生物の起源のころ、RNAスイッチとしてこの仕組みが使われていたという考えもあります。 原論文はこちら。

Winkler, W., Nahvi, A. & Breaker, R. R. Thiamine derivatives bind messenger RNAs directly to regulate bacterial gene expression. Nature 419, 952-956 (2002)

なお、News & Views もあります。 Szostak, J. W. RNA gets a grip on translation. Nature 419, 890-891 (2002)

さて、Nature の news feature にこの研究が取り上げられていました。 その中で、上記のような低分子を認識して構造変換するような RNA を リボスイッチ("riboswitches")と呼んでいました。 リボスイッチは配列の比較から、植物や菌類においても存在が予測されています。 現時点ではごく一部の生物で確認・あるいは予測されている現象に過ぎませんが、 特定の遺伝子を扱う際には、その mRNA がリボスイッチである可能性も 心に留め置く必要があるでしょう。 おそらく、二次配列の予測プログラムなどを用いれば、 簡単な予測はできるのではないでしょうか。 基質の種類まではわからないにしても。

Knight, J. Switched on to RNA. Nature 425, 232-233 (2003).

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