6本足の節足動物≠昆虫

Last updated on Friday 26th September 2003


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仲田 2003.03.25 Tue 14:31:49
6本足の節足動物はHexapoda(六足類)として分類されます。 これがいわゆる昆虫に相当する分類群でした。 (狭義のInsecta;昆虫類は六足類から幾つかの無翅「昆虫」を除いた分類群) 今回、ミトコンドリアの複数遺伝子を用いた解析から、 六足類が多系統である可能性が示唆されました。 すなわち、狭義のInsectaが甲殻類と近縁で(甲殻類の内群である可能性も)、 Insectaと甲殻類の分かれる前に、トビムシ目(Collembola)が分かれたようです。 系統樹の色々な解析法や検定法を試したようで、 かなり確からしい結果とされています。 この結果は、甲殻類様の祖先から、 6本足で歩く陸上動物が少なくとも2回は進化した(上陸した)ことがわかります。

原論文は
  • Nardi, F. et al.
  • Hexapod origins: monophyletic or paraphyletic.
  • Science 299, 1887-1889 (2003)
Perspectiveより
  • Thomas, R. H.
  • Wingless insects and plucked chickens.
  • Science 299, 1854-1855 (2003)
仲田 2003.09.17 Wed 14:28:34
ドキュメント一覧にある上記のテーマ について, Science 誌上で Technical comment が出ました。

もともと,Nardi らの論文で, ミトコンドリアの複数遺伝子を用いた解析から、 六足類(昆虫+無翅「昆虫」)が多系統となり, 狭義の昆虫が甲殻類の姉妹群になることが提案されました。

ところが,Delsuc らは系統解析法を改良した結果, 従来通り六足類は単系統となり,甲殻類は六足類全体の 姉妹群になることを確認しました。 すなわち,Nardi らの結果は系統解析法に由来する Artifact とみなしたのです。

これに対して Nardi らも系統解析を多少修正して, 自分たちの過去の結果を確認しています。

現時点では,いずれの系統樹が正しいのか評価するのはかなり困難で, 2通りの可能性が存在することを認めるほかないでしょう。 実際に,両グループとも,自分たちの結果が絶対とはみなしていないようです(弱気?)。

なお,従来の定説は,Dulsuc らの, 六足類が単系統と成る系統樹の方です。

原論文はドキュメント一覧を参照 これに対する Technical comment

Delsuc, F., Phillips, M. J. & Penny, D. Comment on "Hexapod origins: monophyletic or paraphyletic?" Science 301, 1482d (2003).
Nardi, F. et al. Response to comment on "Hexapod origins: monophyletic or paraphyletic?" Science 301, 1482e (2003).

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