生命の木

Last updated on Sunday 20th July 2003


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仲田 2003.06.18 Wed 18:14:28
全生物を包括した系統樹を構築しようとする試みがあります。 これはつまり,生物の全歴史を明らかにしようという試もいえるでしょう。
現在までに,全生物の系統がどこまで明らかになり,どのような問題点があり, どのようなアプローチや応用があるのかが,最新号の Science で特集されています。
特集の概要は Sugden らによる以下の記事を読めばわかるので,興味がある方は参照してみてください。 ちなみに私は Baldauf の,真核生物の最初の分岐がどこに当たるのかを論じた論文に特に興味があるので,こちらの引用も載せておきます。
実用的なネタとしては,全生物の暫定的な系統樹が本誌および Web 上で(無料)公開されています。 この系統樹は控えておくと便利かと思います。

Reference
  • Sugden, A. M., Jasny, B. R., Culotta, E. & Pennisi, E. Charting the evolutionary history of life. Science 300, 1691 (2003).
  • Baldauf, S. L. The deep roots of eukaryotes. Science 300, 1703-1706 (2003).

仲田 2003.06.20 Fri 11:00:26
主な記事のテーマを紹介しておきます。
Benton & Ayala の論文は,分子系統樹や化石を用いた分岐年代の推定一般に関する最近の進歩と今後の展望についてのレビューです。
Chothia et al. の論文は,タンパク質ドメインの重複や組み換えによる進化をゲノムの観点も導入して考察し, 果ては代謝経路の進化についてまで議論したレビューです。
Baldauf の論文は,真核生物の大系統(界のレベルの系統)について, この数年の進歩をレビューしています(真核生物の大まかな系統樹もある)。
Eisen & Fraser の論文では,進化の考えがゲノム構造の解析にどう役立つのか, 逆にゲノム解析が進化の研究にどう貢献するのかを Phylogenomics という融合分野として解説していました。
Mace et al. の論文では,絶滅危惧種の保護のためには,生物の系統関係の理解も重要との議論を展開しています。

Reference (Baldauf (2003) 以外)
  • Benton, M. J. & Ayala, F. J. Dating the tree of life. Science 300, 1698-1700 (2003).
  • Chothia, C., Gough, J., Vogel, C. & Teichmann, S. A. Evolution of the protein repertoire. Science 300, 1701-1703 (2003).
  • Eisen, J. A. & Fraser, C. M. Phylogenomics: Intersection of evolution and genomics. Science 300, 1706-1707 (2003).
  • Mace, G. M., Gittleman, J. L. & Purvis, A. Preserving the tree of life. Science 300, 1707-1709 (2003).

柿原 2003.06.20 Fri 12:47:07
ものすごくベーシックな質問なんですが…。 配列の比較をよくやるようになったので、どうしても系統分類の 知識が必要になってきました。どうして外群設定をしなければいけないか、 というレベルから書いてある教科書でおすすめのものはありませんか?
仲田 2003.06.20 Fri 13:26:01
最近,新しい系統解析法がいろいろと出ているので,最新の本ではないのはお断りしておきますが, 入門書としては2〜3冊,心当たりがあります。
系統進化,種多様性などの関連分野の基礎を簡潔に書いた教科書としては, こんな本があります。 ただし,この本は系統樹の具体的な作成法などまでは言及していなかったと思います。
基礎からより具体的な話までを解説した本としては,こんなのがあったと思います。 こっちの方は通しては読んでいないので,内容に責任は持ちかねますが,系統解析に特化した教科書に見えました。

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